LOGIN物心付いた頃から理由も分からず屋敷の人たちから毛嫌いされていた、その環境を作っていたのが
お継母様の実家は商家の家系という事もあってか人心掌握には長けているように見え、娘のソフィアもそれに乗っかるようにしてやりたい放題。それを諌めようともせず笑っているだけの人達を見ると、気持ち悪いとすら思えてくる。
そんな人達と私を結びつけているのが、このオーエンス家現当主である【オウル・オーエンス】。その他にもお父様の弟やお祖母様もご存命との事だが、何故か幼い頃の記憶にしか残っていないほどお会いしていない。
そんなオーオンス家が一同に会するのは実に珍しい事で、屋敷の人全員も呼ばれているようで執事やメイド達も壁の方で並び立っているが、私も含め呼ばれた理由については誰も知らないらしく皆が不安そうに目配せしながら、静かにしている。
「ねぇ〜、お母様。なんで集められてるのよ」
「私も聞いておりません」
「ふぅーん‥‥」
暫くすると、屋敷用の装いに身を包んだお父様が大部屋の中に入ってきた。こうして改めて見ると我がお父様ながら整った顔立ちに、鍛えられた体つきなど客観的に見てもこの国で上位に入るほどのかっこよさだと思う。髪は
私にはお父様と同じような共通点がなく、これがまたこの中で家族の輪に入れていないのだと感じさせられる。
「すまんな、皆。急に集まってもらって」
「ねぇねぇお父様、何のお話なの?」
「そうよ貴方、急に何のお話かしら?」
二人の言葉にお父様の目が鋭くなったような気がし、続く言葉に固唾をのむ。空気の読めない二人が少しだけ羨ましくも思える、私にとって不都合な内容でなければいいが‥‥と。
「一週間後、王太子主催の夜会が開かれる事となった」
「あら、その程度の話?それなら
たしかにそれぐらいの事でわざわざ全員を寄せ集めるとは思えない、それに私は今までに夜会に呼ばれるどころか声をかけられたこともない。知らぬ間に終わっていることばかりだったから、それなのに何故今回は私も呼ばれているのか続く言葉に耳を傾ける。
「表向きは、先日の"大規模魔獣掃討作戦"の成功を祝した会という事にはなっているが、その裏で王太子の婚約者を選びだす事になっている」
その瞬間、
「その話はどこから?」
「王から直接な」
「他の家には?」
「そこまでは知らん、だが此度の掃討作戦において私が戦果を一番に上げた事を考えると……」
「当家だけの可能性が、とういう事ですわね?」
「真意はわからんが可能性はある」
私も夜会に出れるという事なのでしょうか、王太子がどんな人かは噂程度でしか知らないですが可能性があるのであれば夢見ずにはいられない、それにお父様が話を持ってきたという事は、私達に王妃の座を狙えと言っているようなものでしょう。
と、そんな事を思うがそれ以上に、成し得た暁には褒めていただけるかもしれないと期待せずにはいられない。
そんな事を考えているとお父様と目があった、何を伝えようとしてるかは分かりませんが私にも頑張れと言いたいのでしょうか。私が口を開け話しかけようとすると、ソフィアがすぐに間に入ってきてお父様と話し始める。
「ねぇねぇ、お父様!私がお姫様になれるの!?」
「可能性の話だ」
「ソフィア、時間がありません。当家が優位かもしれない状況ですがやれるだけの準備はしますよ?」
「なにそれ?」
「私に任せておきなさい、他家を蹴落としてでも貴女を王妃に仕立て上げて見せます」
「う〜ん、頑張る!」
いつも通りに私のことは視界に入っていないらしく、二人が舞い上がっている姿を見ると、途端に自信がなくなる。思い返せば夜会に行くようなドレスも、アクセサリーも持ち合わせていない。それどころか、巷では"灰かぶり姫"とまで呼ばれる始末、私の容姿では王太子の目にも留まらないでしょう。
そうしてその日は解散となった、夜会まであと一週間。屋敷の者が総出でソフィアを王太子の婚約者に仕立てようと動き回っていた、ドレスのお直しや礼儀作法の練習、当日の装いの確認など私以外の者達が慌ただしくしている。
「はぁ〜っ‥‥憂鬱ね」
出るのはため息ばかりで、唯一相談できるお父様は書斎にこもって持ち帰ってきた書類仕事に勤しんでいるらしく、話しかける事はおろかセブンスに入室すら禁止され夜会までは何もする事がなく、時折やってくるソフィアの嫌味を聞き続ける日々でしかなかった。
それでも少しだけ夢見ずにはいられない、婚約者として見初められる事になればこの生活から抜け出せられるのかしらと、
そうして迎えた夜会当日の昼頃、私の周りは静かになり皆がソフィの元へと集まっていた。私はというと、自室に残されたドレスの中から一番マシなものを選び、身化粧を整えていく。
初めは不参加にしようかと思っていたが、何故か
「仕方ないわね、逆らう事は出来ないのだから」
そう自分に言い聞かせながら化粧台に座ると、扉のノックする音が聞こえた。またソフィアが嫌がらせでもしに来たのかと嫌になり重たい体を何とか持ち上げドビラの方へとゆっくり歩いていく。
「はい」
私は扉を開けると目の間にいた人物を疑ってしまった、だってこんなところにいるなんて夢にも思わなかったのだから。
「突然すまない、少しいいか?」
「はい、お父様。お入りになられますか?」
「あぁ、失礼するよ」
いつぶりだろうか、こんな他愛もない会話ですら今まで交わことが無く込み上げるものがあり不思議と涙が流れそうになる。でも、この後のことを考えると堪えるしかなく冷静にいつも通りにと体に力を入れて堪える。
「突然すまない」
「ふふっ、先程も聞きましたよ」
「そ、そうか……すまない」
どうしても会話がぎこちなくなってしまう、お互いに必死に言葉を探っているようで話したい事は多いですが、この時間にここに来た理由があるはず。それを話さなければと頭を動かしていく。
「お父様、何か御用がおありでは?」
「あ、あぁ今夜の夜会のことだがドレスやアクセサリーなどは満足したものがあるのか?」
「えぇ、特に不満はございません」
咄嗟に私は嘘をついた。ここで本当の事を言えば私自身の現状が伝わるかもしれない、そうなればこれから私の扱いはより酷いものになるかもしれない。だってお父様は傍にいてくださらないのだから。
そう考える事だけが唯一、自分を守る事なのだとこの数年で思い知らされている。僅かな期待も抱かずに、ひたすら耐え忍ぶと。
「そうか……もし良かったらなんだがな」
そう言うと扉のノックする音が聞こえお父様が扉を開ける。すると、大きな鞄を持ったメイド服の女性が部屋の中に入ってきたが、この屋敷で見たことの無い顔で一体誰なんでしょうと不思議そうに見つめていると、そのメイドは抱えたカバンを開け中に入ってるものを私に見せてくれる。
「エレナさえよかったら今夜の夜会にどうだ?」
「‥‥えっ?」
私は思わず口元を手で押さえる。
中に入っていたのは美しいドレスが一着と、アクセサリーが数点だった。予想していなかった出来事に言葉が出てこないほど驚いた、まさかお父様が私のために用意してくれるなんて思ってもみない。私が着る予定だったドレスとは比べ物にならないほど美しく、まるで夜空のようなディープブルーに控えめながらも散りばめられた宝石が星々の様に輝くドレスは息を呑むほどだった。
「私に……ですか?」
「あぁ、勿論だ。今までこういった贈り物をしたことが無かったからな、アリサに相談しながら決めたんだ」
そう言いながらお父様はメイドの方に目をやる、鞄を持った彼女はこの屋敷ではありえないほどの笑顔を浮かべながらこちらを見つめている。話を聞くと遠征先で雇ったメイドで【アリサ】と言うらしく、優しい口調で自己紹介をしてくれた。
華奢な体ながらもメイド服に隠れたスタイルの良さが際立って、金色のツインテールが優しく揺れている。この美しい女にメイド少しだけ嫉妬を覚えてしまいそうになるが、心の底に押し込める。
「でも、こんな高価なもの私には」
「いらなければ別に構わないから」
そう言いながらお父様はアリサを残して部屋を出ていってしまった、残された私はドレスにそっと手を触れてみる。
「アリサさん、ありがとうございます」
「アリサで結構ですよお嬢様。それに、そのお言葉は是非ドレスに身を包んでから旦那様に申してあげて下さい」
「そうね、そうね……」
初めてのことに戸惑いながらも慣れないドレスに身を通していき、化粧やアクセサリーなどはアリサが施してくれた。どちらも初めての事で言われるがままに身を任せることしか出来ず、まるで夢の中に落ちていくような気分になる。
「出来ましたよ」その一言に現実に戻され、ふと気がつけば鏡の向こうには全くの別人が立っていた。
「綺麗……」
思わず口からこぼれてしまう、ドレスもアクセサリーも全身を包むもの全てが美しく私という個人が霞んでしまうほどに。だからなのか、余計にこの灰色の髪が疎ましく感じてしまった、お父様と同じ髪色ならと。
「私にはもったいないわね」
「いえ、そのような事はありませんよ」
「お世辞でも嬉しいわ、ありがとう」
「エレナ様、"ドレスは女の鎧"です。素敵なドレスに身を包んだ貴女なら、怖いものすらないかと」
「ふふっ、素敵な言葉ね。確かに、このドレスなら怖いものなど無いのかもしれないわね」
そうして鏡の奥のドレス姿に見惚れていると時間を忘れてしまいそうなほどで、再びアリサの声によって我に返る。どうやら、夜会に向う馬車がやってきたようで庭に皆が集まっていると。
私は少し急ぎ足ながら庭に向かって歩いていく。
もう既に夜会に向かう準備は出来ているようで、後からきた私に対してその場にいた全員の視線が集中していた。驚き、嫉妬、妬み、その感情は簡単に読み取れるほどで様々だった、ソフィアの表情が今までに見たことが無いほどに引きつっていたのは少し気分が良かった。
「アリサの言ったとおりね」
そう小さな声で伝えると、優しく笑っていた。
そうして私も馬車に乗り込もうとすると、
「誰かしら貴女は?」
「あら、あまりの変わりように娘の事もお忘れで?」
「そんなドレスどこから盗んできたのかしら、それともバカな男でも捕まえて貢がせたのかしら?」
「ご存知の通り知人すらいない生活でしたので、意味がわかりかねます」
「ちっ、生意気な」
そう捨て台詞を残し馬車の中へと入っていったその背中を見つめる。内心手を出されなくてホッとする、背筋を伝う冷や汗を感じながらもこのドレスのおかげで臆することなく言い返す事が出来た、アリサにもお父様には感謝しなければね。
「その意気です」
「ふふっ、ありがとう」
隣でそうつぶやきながらアリサが馬車まで案内してくれた、私は
そんな事を思いながら高く上がっていた月夜を背に、私たちは会場へと走り出していく。
私達が向う先は王城。本日は大規模な夜会ということもあり馬車が何台も連なっていた、馬車を降りる人達を見るとこの国の重鎮たちの顔がいくつか見受けられた、これらを前にして何事もなく終えれたらいいのだが。私が乗っていた馬車も足を止め、外へと身を乗り出す。お継母様とソフィアは既に会場に向かっているようで周囲にはいなかった、お父様の姿も見えないがどこへ行ってしまわれたのだろうか。探す余裕もないので会場につながっているレッドカーペットに足を踏み入れる、周囲が急に騒がしくなり辺りを見渡すが何か起こった様子もみられない、緊張感からか足が重たく感じるが前に前に歩みを進める。「大丈夫、最高の鎧を身に着けているのですから」小さく、アリサの言葉を胸に抱く。「わぁ、凄い……」会場の中へと入ると、まさに豪華絢爛といったような巨大なシャンデリアや美しい花々、煌めかしい灯りと、天井にある大きなドーム型のガラス窓と周りのガラス窓から入る月明りが幻想的な演出を作り出していた。見たことないものばかりで目が眩みそうになる。「お父様のドレスがあって良かったわ」当初のドレスでは萎縮して周りから変な視線を向けられていた事でしょう、にしては先程から変な視線をそこらじゅうから感じるので、私はその視線に耐えれなくなり会場の端の方へと向う。すると、足下が何かに引っ掛かり大きく転倒してしまった、一気に恥ずかしい感情に襲われながらも、誰かの足を引っ掛けたのかと焦りながら目線を向けるとソフィアの足が伸びていた事に気がつく。周りの人はざわついていたが、ソフィアだけが笑みを浮かべている。「ソフィア……」「あらお異母姉様、大丈……」ソフィアが私に手を伸ばそうとした瞬間、周囲がさらに騒がしくどよめきだした。その視線の先は私ではなく、隣の人物に注がれていた。「大丈夫ですか?」男性の声が聞こえ、見上げると誰もが知っているこの国の王子殿下が手を差し伸べていた。私は惹き寄せられるかのように差し出された手に触れる。白髪でとても優しい雰囲気をまとっておりこの会場で一番の存在感を放っている、噂の通り誰に対しても分け隔てなく優しく接し、誰からも愛される人物であるその噂は間違っていないのだろうと感じさせてくれていた。「あ、ありがとうございます……王子殿下」「いえお怪我はありませんか?」
私の名はルーゼン・オーエンス。このオーエンス家に嫁いできてはや十数年。私と血の繋がったソフィアに、オウル・オーエンスが連れていた忌々しい灰かぶり、母親はおろか出自すらも明かされずその見た目から悍ましさすら覚える。一度家から追い出そうとしたが、我が子可愛らしさにオウルが何度も何度も阻止しようと動き回り思い通りにいかなかった、私の実家より位の劣る分際で灰かぶりにも似て生意気に。「それが今度の夜会で変わるかもしれないわね」オーエンス家から選ばれるとすれば私の可愛い可愛いソフィアでしょう、あんな見た目の灰かぶりが選ばれるはずもないのだから。そんな事を考え自室で思案を広げていると扉のノックする音が聞こえる、部屋にいたメイドに扉を開けさせると珍しい二人が断りもなく部屋の中に入ってきた。「これはこれはお母様、お兄様。急な来訪ですわね?」「ふふふっ、ルーに会いに来たのに急もあれへんやろ」「可愛い妹がこんな家で辛い思いをしていないか心配で心配で、お兄ちゃんはたまらないよまったく」「そう言うなザンラ。あれでも武功を上げて成り上がってきてんから、嘘でも褒めるぐらいはしたりな」入ってきた二人は私の母と兄。母の方は【グレア】といい何代にも渡ってこの国を支え、商いで今の地位を築き上げてきた。鋭く相手を値踏みするかのような目線と頭の回転に畏怖の念を抱かせる者も少なく、私自身も娘ながらその内の一人である。兄の方も母に見た目がそっくりで名は【ザンラ】と言い、良くも悪くも母の全てを受け継いだ次期当主。掴みどころのない飄々とした態度は昔から変わらない。この二人が足を運ぶ事は余程の事なのでしょう、二人を目の当たりにした瞬間から頭を回転させ緊張の糸を張り詰めさせ、悟られないようにと軽い抱擁を交わし私は二人を部屋のソファに案内し対面に座る。「それでお母様、お兄様。何用ですか?」「全くお前は、急に本題て‥‥少しは親子の会話をしようとならへんのかいな」「"時は金なり"、お母様の教えですわよ?」「それもそうやなぁ……本題、お前に用件があったのは王子殿下の次期王妃選定についてや」その言葉に部屋の空気が冷たくなったように感じる、私ですら先ほど聞かされた話を何故この二人が知っているのか。疑問に思わなくはないがそれを成し得るだけの力を持っているのは間違いない、この国中に
物心付いた頃から理由も分からず屋敷の人たちから毛嫌いされていた、その環境を作っていたのがお継母様の【ルーゼン・オーエンス】だった。お継母様の実家は商家の家系という事もあってか人心掌握には長けているように見え、娘のソフィアもそれに乗っかるようにしてやりたい放題。それを諌めようともせず笑っているだけの人達を見ると、気持ち悪いとすら思えてくる。そんな人達と私を結びつけているのが、このオーエンス家現当主である【オウル・オーエンス】。その他にもお父様の弟やお祖母様もご存命との事だが、何故か幼い頃の記憶にしか残っていないほどお会いしていない。そんなオーオンス家が一同に会するのは実に珍しい事で、屋敷の人全員も呼ばれているようで執事やメイド達も壁の方で並び立っているが、私も含め呼ばれた理由については誰も知らないらしく皆が不安そうに目配せしながら、静かにしている。「ねぇ〜、お母様。なんで集められてるのよ」「私も聞いておりません」「ふぅーん‥‥」暫くすると、屋敷用の装いに身を包んだお父様が大部屋の中に入ってきた。こうして改めて見ると我がお父様ながら整った顔立ちに、鍛えられた体つきなど客観的に見てもこの国で上位に入るほどのかっこよさだと思う。髪は黄金色ではなく白銀の美しさをしており、瞳には私以外と同じくサファイア色を浮かべている。私にはお父様と同じような共通点がなく、これがまたこの中で家族の輪に入れていないのだと感じさせられる。「すまんな、皆。急に集まってもらって」「ねぇねぇお父様、何のお話なの?」「そうよ貴方、急に何のお話かしら?」二人の言葉にお父様の目が鋭くなったような気がし、続く言葉に固唾をのむ。空気の読めない二人が少しだけ羨ましくも思える、私にとって不都合な内容でなければいいが‥‥と。「一週間後、王太子主催の夜会が開かれる事となった」「あら、その程度の話?それなら私も聞きましてよ」たしかにそれぐらいの事でわざわざ全員を寄せ集めるとは思えない、それに私は今までに夜会に呼ばれるどころか声をかけられたこともない。知らぬ間に終わっていることばかりだったから、それなのに何故今回は私も呼ばれているのか続く言葉に耳を傾ける。「表向きは、先日の"大規模魔獣掃討作戦"の成功を祝した会という事にはなっているが、その裏で王
「あはははは……あーっははははははっ!!!」生きる者を慈悲なく呑み込む闇夜の森、恐ろしげな静けさの中で私は高らかな産声を上げたこの瞬間に、世界が生まれ変わっていく音が聞こえる。体を撫でる風が心地良よく感じ、周囲が光り輝き始め、全身を激流の様に巡る血や煩いくらいに高鳴る鼓動でさえ〝はじめまして〟と言いたくなる。空を見上げていた目線を落とし、ほんの少しの冷静さと辺りを漂う死臭が一気に現実へと引き戻してくる。そうして、私の状況を再び認識したその時に、抑えつける事の出来ない感情を解き放たれる。「お継母様も、異母妹も、全員この世界から居なくなってしまえばいい!」内から出る感情が刃のように喉を切り裂き飛び出していく、痛く焼けるようだが溜まっていたものを吐き出すのは気分が良い。「あいつらを取り巻く人間は皆、死ねばいいっ‥‥苦しんで、追い込まれて、絶望するがいい!!」私は今までずっと我慢してきた、抑えて潰して押し殺して、いい娘であろうと良き婚約者であろうと、全てを捨ててでも我慢して耐え続けてきた。もうこれから私を縛るものはない、私は自由だ。生まれて初めての自由を手に入れた。「ふふっ、エレナじゃったか?余程の事があったようじゃのぉ」その声に、私は重たくなった頭で振り返る。この森の中には私以外にもう一人だけ生存者がいた、妖艶な声をかけてきた彼女の声が私の耳を撫でるようで、不思議な雰囲気を纏いながらもどこか懐かしさも覚えていた。「ありがとう、【魔王オルタナ】。そうね……長いようで短いような、そんな日々だったわ」あの日はもう戻らないと、喜びにも似た哀しみが頬を伝う涙として自然とこぼれ落ちる。感情とはこうも制御が効かないものなのかと、涙を拭いながらオルタナに顔を向ける。「その、唯一抱きかかえておる人は…」多数の死体が周囲に転がる中、私は動かなくなった一人の男性だけを抱きかかえていた。次第に失われていく温もりに確かな死を感じながら、抱きかかえる手に力が込められる。そうして、絞り出すように声を出す。「あり‥‥さようなら、お父様」言葉を漏らした







